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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : Venture Business

2005 年 10 月 30 日 : S字カーブ

モバイルインターネットの基本ソフトウェア技術を手がける、ソフィア・クレイドルはハイテクベンチャーというカテゴリーに分類される。

ソフトウェアという分野のハイテクベンチャーを起業する際、押さえておくべきポイントは何か。起業を確実に成功させるため、これは大切な問題意識である。

一般に、製品やサービスは横軸を経過時間、縦軸を販売数量とした時、正規分布の曲線を描く。時間軸で積分した累積の販売数量の曲線がよく言われるS字カーブである。

ハイテクベンチャーでしばしばあるのは、S字カーブの最初の直線が全然浮上せずそのまま終ってしまうケース。もう少しでS字のカーブがプラス方向に浮上し、全く逆のシナリオになったであろうケースも数え切れぬほどあるだろう。

対象とする要素技術が真に人びとから望まれるものであるならば、時間の問題で、そのビジネスは間違いなくS字曲線を描いて発展し繁栄を築く。けれども有望なハイテクベンチャーでもその大半は失敗に終る。

破綻の原因は、会社のキャッシュが無くなった、という単純な事実に過ぎない。だから破綻しないためには、会社からキャッシュが減らないような努力をすれば良いだけなのだが、この経営センスが難しく思われる。

というのは、世の中、業界、会社で起こる現象や出来事の、微妙なニュアンスの意味を適切に解釈して意思決定し行動する必要があるからだ。

大切なのは、何処が分岐点になるかの見極めだろう。ハイテクベンチャーの場合は、最初にS字カーブが浮上し損益分岐点を越えるポイントである。そのポイントまで、キャッシュがかなり余裕をもって存在するように経営すれば破綻する確率は大幅に低減される。

未来予測は、さまざまな情報をインプットし論理展開する必要がある。いくら時間があっても足らない。正確に予測しようと思えば思うほど、そのために多大な情報と労力が要求されるものである。

経営者にとっては、時間こそが最も貴重な経営資源である。だからその時間をどれくらい大切にしてその未来予測に投入しているか。そういった行動がそのベンチャーの未来を決定づける。

  

2005 年 10 月 29 日 : Tapestry

テレビにしてもパソコンにしても、それらに映し出される映像や画像は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)という基本的な 3 色の組み合わせたものに過ぎない。そのシンプルさがなんとなく不思議に感じもする。

実は世の中の複雑そうに見える出来事も、紐解けば基本的な要素が織り成すタペストリーなのではないだろうか?複雑そうに見えるものを不自然に考え込んだりして事態が悪化の一途を辿るケースもよくある話。

シンプルイズベスト。

しばしば言われる言葉ではある。でも実践するのは難しい習慣である。元来、世界全体がシンプルな構造で出来ているのだから簡単なはずなのだけれども。

それは、地球上の生命の中でも人間だけにある、顕著な特徴とも言える感情が却って災いしているのではないだろうか。誰もが個人的な感情を抱えて生きていると思う。そういった感情は世界を客観的に捉えるにあたって障害になりやすいのかもしれない。

ベンチャーの場合、経営資源が極端に限られるのは確固たる事実である。でも何千万色にもおよぶ様々な色も基本はたった 3 色なのだ。その限られた少数の経営資源でも組み合わせは無限にある。そんな無限の組み合わせの中から、ダイヤモンドのごとく光り輝くものを見出してプロデュースする仕事は、ベンチャー起業家の重要な役割のひとつ。

では、その才能を磨くためにはどうすれば良いか?

それは、音楽でも絵画でも文学でも何でもいい。素晴らしいものを何度も何度も繰り返し感じとること。感覚と感性を育んでゆく訓練が欠かせないだろう。

  

2005 年 10 月 29 日 : 世界への橋頭堡

お客様の大半は東京の会社である。しかしながら、過去 1 年間、 1 度も東京へ出張していない。(そもそも京都を離れたのはささやかな用事で大阪へ 2 度あるくらい。限りある時間をこの上なく大切にしているので社外の人とも滅多に会わない。)ビジネスの大半は東京を中心とする首都圏でなされている。だから手っ取り早くビジネスを立ち上げたければ東京へ行くのがベストなのは確か。

でも敢えてその道は選ばなかった。人と違う行動を採ることはベンチャーらしく思えた。誰もが発見できない新しいビジネスチャンスはそんな行動の中から生まれるものでは?

皆が東京へ出稼ぎに行くからそれに習えば儲かるというのは面白くない。東京へ行くこと自体に何も問題はない。昔むかし、京都が首都だったはずで、時代の流れに翻弄されたくもない。

創業以来、外出を避けていたのには理由がある。そういった状況に自らを追い込めば、京都からでも日本全国に商品が売れるための仕組みが必然的に創造される。

マーケットが東京だけならば東京に出張しても、支店を開設しても全然問題ない。ビジネス的にそうすべきだろう。しかしソフィア・クレイドルのマーケットエリアは全世界なわけ。たまにローマやパリ、ロンドンへ出張するのならば、それも良い。けれども何か案件が発生するたびに海外出張しているとすれば、人がいくらいてもたらないビジネスモデルが出来上がってしまう。

それを避けるために、最初からハードルを高くして、営業はインターネット 1 本で、商品の出荷は宅配便、サポートはメールという手段ですむビジネスモデルを構築していった。

インターネットだけで商品を売る難しさは身に染みるほど味わった。でもそれを一種のパズルのようなゲームに置き換えてみることでいろんな発想が思い浮かんだ。様々なアプローチを実践し、取捨選択しながらここまで来たのだけど、幸い何とかここまでやってこれている。

ネットから注文が入れば、宅配便の会社にダイヤルするだけで荷物が配送されるように業務がスムーズに流れている。発注元が国内であろうと海外であろうと、日本語と英語の違いを除けば、受注・出荷処理の中身は全く同じ。京都に本社があるだけで世界マーケットを対象にしたビジネスができる。それはインターネットの偉大さを実感する瞬間でもある。

  

2005 年 10 月 28 日 : ソフトビジネスの本質

人生のすべてを賭けてベンチャーを創める以上、必然的に成功に導いてくれる原理原則を発見するのが先決だろう。起業する前からそう思っていた。

手掛けた業界はソフトウェア。ソフトビジネスとは、過去に存在し得なかった何らかのソフトを創造し、CD、DVD、ネットなどを媒体としてコピーして出来る限り多くのお客様に配布するビジネスである。

お客様にそのソフトが選択されるかどうかが最大のポイントである。世界中の限りないお客様から注文が入るに越したことはない。だから"お客様がそのソフトを買うエンディングシーン"がイメージできるか否か。鮮明にイメージできれば、ビジネスは自ずと成功するだろう。

1 万人中 1 番よりも 100 人中 1 番の人材の方が確率的に見つけ易い。しかし、ソフトビジネスの場合、100 人中 1 番を 100 名集めるよりも 1 万人中 1 番を 3 名集めて創める方が、成功する確率は桁違いに飛躍するのだ。

3 名が研究開発、マーケティング、デザインという、それぞれの専門分野で 1 万人中 1 番に秀でた人物であったとする。統計学的に 1 兆分 1 の確率でしか発生し得ない出来事だ。それが現実となれば、他では得がたいオンリーワンにしてナンバーワンのソフトが創造される可能性が限りなくひろがってゆく。

人がそのソフトを買う理由は明らかである。必要なのに自力ではすぐに実現できずマーケットにも存在しないからだ。100 人中 1 番の 100 名が創るソフトは確かに優秀なものである。けれども突出した何かに欠けるのも事実だ。それはソフトを全世界に流通させるためには致命的な欠陥なのである。世界の人びとが敢えてそのソフトを買う理由を見出せないからである。

ソフトは人によって創造される。それ故に、このビジネスで成功を収めたければ、一人でもいいから必要とされる専門分野に限定して構わない 1 万人中 1 番の逸材を求めること。この原理原則に従ってマイペースで行動できるかどうか。それが運命の分かれ道となるだろう。

  

2005 年 10 月 27 日 : 無→有

ベンチャーとは、無から有を生み出すもの、という印象がある。それでは、どうすれば無から有を生み出すことができるのかという疑問が起こる。無から有への移り変わり。実は、それがささやかなものであったとしても偉大な出来事なのだ。

1999 年 2 月。携帯電話がネットに接続されるようになった。それは携帯電話を一種のコンピューターと見なせる瞬間と言えた。歴史のそういう瞬間をどんな風に解釈して行動するかで未来は劇的に変化する。

1990 年代に入り、"ダウンサイジング"というキーワードがコンピューター業界で流行語になっていた。IBMの大型コンピューターで処理されるプログラムはパソコンのようなコンピューターでも実現可能であることを指して"ダウンサイジング"と呼んでいた。

だから1999 年 2 月を、パソコンから携帯電話へのいわば"ダウンサイジング"の変曲点として位置付け、新たなビジネスチャンスを見出そうとしたのだった。その時点では一般に利用可能な携帯電話用ソフトの開発環境は何も公開されていなかったが、いろんなシーンの想像はできた。

様々なシナリオを思い描きつつステップバイステップの歩調で現在に至る未来への道筋を明確化していった。そこで重要な発想は、"何故パソコンが大型コンピューターにとって変わるほどの発展を遂げたのか?"という問いかけにある。

パソコンもマイコンと呼ばれていた時代は、プログラミングするための道具に乏しく、ハード自体の性能にも難点がありその進歩はゆったりとしたものであった。しかし 1980 年代の 10 年間でその形勢は一気に逆転するほどまでになった。

それは、ハードの進化と共に安価で速いコンピューターが入手できるようになり、世界中のプログラマーが便利で使いやすいソフトを開発したことが最大の要因ではなかっただろうか。

今、携帯電話はパソコンの 10 分の 1 以下の価格で手に入れることができる。表現を変えればそれくらい安い持ち運びのできるコンピューターとも言える。

携帯電話でパソコンのソフトが使えればと思う人は少なくないだろう。何故ならノートパソコンを持ち運ばなくても済むからだ。ここでもう一歩掘り下げたのがソフィア・クレイドルのビジネスの発想の原点なのである。

パソコン用ソフトと同じ手軽さで携帯電話用ソフトを開発するにはどんなものが必要なのか?という問題意識を具現化したものが、現在のソフィア・クレイドルの製品のオリジナリティである。

現在ではさらに発展させて、携帯電話サイズのコンピューターならば…という風に視野をひろげて事業に臨んでいる。

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2005 年 10 月 23 日 : 伝えたいこと

今、NANA という映画の劇場挿入歌 ENDLESS STORY がヒットしている。歌詞の中にこんな言葉があった。

  たとえば
  誰かのためじゃなく
  あなたのために
  歌いたい この歌を
  終わらない story
  続く この輝きに
  Always 伝えたい
  ずっと永遠に

この曲を何度も聴きながら、キーフレーズは"あなたのために"ではないか。多くの人びとはこのフレーズにシンクロしてこの曲を聴いているのではないだろうか。そう思った。

商売をしていて常々思うのは簡単なことみたいだけれど、真に"あなたのために"という思いで、かたちある仕事をするのは難しい、ということである。だからこそ私たちは潜在的にそんな雰囲気に憧れを抱く感じがする。

お客様がその製品やサービスを利用するシーンを具体的にリアルにイメージすることができるか。シンプルに商売が成功するかどうかはその一点に委ねられていると感じる。

  

2005 年 10 月 21 日 : 成長の実感

2005 年 10 月から第 5 期がスタートした。今日は決算の書類整理のためにお客様からの注文書をバインダーに閉じていた。第 4 期の注文書は 8 センチバインダー 1 冊にまとめることができた。感慨深かったのは同じ厚さのバインダーがもうひとつあったことだ。それには第 1 期から第 3 期までの 3 期分の注文書がまとめてあった。

注文書を閉じるバインダーの厚さで会社の成長を実感できるフェーズにようやく突入した。創業の頃、販売する製品すら無かったり悪戦苦闘しながらベンチャー的な香り漂う製品を販売していた日々とは隔世の感がある。

今のペースからすれば第 5 期の注文は海外からの受注も見込めるので大幅に増加する見通しだ。しかしスタッフ増員の計画はいまのところない。これまでの 4 年間で、売上が増加してもスタッフの人数を増やすことなく回るビジネスモデルを意識的に創ってきた。数年間はこのペースで伸びても数名のスタッフを増員するだけでいいスケーラブルなシステムになっている。

どうしても欲しい人材がいれば若干名採用する程度の人員計画はある。創業以来、スタッフの数は 16 名程度を維持して経営してきた。人数は一定でも売上と利益は着実に伸びている。その分、スタッフの待遇やオフィス環境は改善されてきている。

売上と利益の伸びとスタッフの数をどうバランスをとるかが重要だと思う。理想とする人材にはなかなか巡り合えないだけに、在籍するスタッフにどうやって報いるかというのが先決であると考える。

例えば、仕入れがゼロの会社でスタッフは増えないのに売上が 3 倍になるというのは 1 人当たりの付加価値が 3 倍に高まることを意味する。それはスタッフが以前と比べて 3 人分の仕事をすることに等しい。

ベンチャーで働くメリットは 2 点に集約される。自ら好んで打ち込める仕事を成し遂げれること。それから、その成果に応じて上限のない収入を得られること。第 5 期以降はこれまでの先行投資を回収するフェーズなのでベンチャーの 2 番目のメリットをスタッフが享受できるようにしたいと願っている。

  
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