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2005 年 03 月 17 日 : インビジブルな資産

企業経営において決算書の位置付けはとても重要なものとして扱われる。しかし、それだけで未来の決算書の内容を精緻に予測するのは難しい。何故ならば、「人材力」、「ブランド力」、「ノウハウ」といわれるような極めて重要な資産が財務諸表には顕われてこないからだ。

個人的に企業の実力を測る上で次のような見方が大切なのではないだろうか。

【企業の実力】=【決算書】×【人材】×【ブランド】×【ノウハウ】

ベンチャーの場合、創業間もなければ間もないほど数字で表現される決算書が全体に占める割合は少ないので、ベンチャー起業家には「人材」、「ブランド」、「ノウハウ」に関してその実態を感性を研ぎ澄ませて把握する能力が要請されるだろう。

研究開発型のハイテクベンチャーであれば、創業期は人材の育成や将来に向けた製品・サービスの研究開発、知名度アップなどの仕事に専念せざるを得ないものだ。それらの活動は売上や利益に直ぐに結びつくものではなく、長期的にその企業の発展に大きく貢献する性質のものである。

ベンチャー創業期は「ヒト」、「モノ」、「カネ」といった経営資源が限られるだけに、目にはっきりと見える形としての『売上』や『利益』というものは喉から手が出るほどに希求されるものだ。そのため、そのベンチャーのレゾンデートルに反する内容の仕事であっても、短期的な視点で『売上』や『利益』を伸ばそうとするあまり、本来すべきでない仕事を安易に受注し悪循環に陥るケースもあるのではないかと思う。

好循環な成長スパイラルに乗るには、レースの中でもマラソンのように、企業規模とそのペースの微妙なバランスを適正なレベルで保ちつつ予め段取りして実行する。これは創業間もないベンチャー起業家の重要な役割だと私は考えている。

いますぐ現金化することはできないが、「人材」、「ブランド」、「ノウハウ」は一種の『未来の財産』であり、その企業にとって「金の卵を産む鶏」であり「エンジン」のような存在だ。ベンチャー起業家には、輝かしき未来の姿を鮮明にイメージし、そこに辿り着けるように緻密に計画し着実に実行する姿勢が求められるだろう。

いま数値化できない「人材」、「ブランド」、「ノウハウ」が将来どれくらいの価値をもたらす内容のものであるのかを具体的にはっきりとイメージするようにしなければと思う。それができていれば短期的に惑わされることもなく、自信を持ってしっかりと地に足をつけた経営を実践できる。

負債が多かったり赤字が連続したりすると、やはりどんな経営者であっても、心に余裕がなくなり冷静さを失い、そして「人材」、「ブランド」、「ノウハウ」を適切にイメージできなくなり誤まった意思決定をしてしまうものではないだろうか。中には、大胆に行動し、それによって莫大な成果を得る経営者もいるかもしれないが、そのような天才はそもそも確率的に稀な存在と思う。

ベンチャーだからこそ最初は規模は小さくても、創業期から売上をあげて、しっかりと黒字にする経営が大切なんだと思う。急激に規模を拡大するのではなく、徐々にステップバイステップに伸ばしていくのは一足飛びに急成長するよりもずっと簡単で容易な筈である。

例えば、人材力について考えてみると、最初は創業者1人でスタートしたとしても、ある期間かけて1人前の人材を1人でも育てることができれば、次の段階で2倍となる。更に次の段階においても、その2人がそれぞれ人材を1人でもしっかりと育成できたならば、その次は4倍となってゆく。

こんな風に倍々のペースであれば、「人材」のようにインビジブルな資産も10回繰り返せば最初の1024倍もの数字となり、それが大きな未来の売上や利益となってアウトプットされ、現実化されベンチャーは飛躍してゆく。最初のペースは遅いかもしれないが時間の経過と共に着実にそのペースがアップしていく。それが指数関数的な成長の最大の特徴といえる。そんな成長を支える源といえるものがインビジブルな資産にあるように思えて仕方ない。

インビジブルなんだけれども、「人材」、「ブランド」、「ノウハウ」といったものに自然と立体感が感じられるようなベンチャー経営を目指している。