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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : Philosophy

2004 年 12 月 13 日 : 異なった色彩の輝き

オフィスでメダカたちを飼育している。

物理的には同じ条件なのに、メダカに見えるものと人に見えるものは異なっている、と言えば、それは誰もが納得するだろう。

創造性を育む組織を構成するためのヒントがここにあると思っている。

パソコンや GUI のコンセプトを考案した、コンピュータ業界の偉人アラン・C・ケイ氏は、子供との対話の中から画期的な発明に繋がるヒントを得ることが多いという。

子供には、大人にありがちな固定観念というもが無いからだという。アラン・C・ケイ氏は子供たちと共に日々を楽しんで過ごしているらしい。

人間と動物の違いは、人間は、書物や人からいろんな物事を学んで、これまでに無かったものの創造を積み重ねることで、文化や文明を築き上げるところにあると考える。

社名であるソフィア・クレイドルには 人だからこそもっている智慧というものを大切に育てていきたいという意味が込められている。それ故に、創造的であるためには如何にすべきかということは経営上の最重要課題なのである。

会社はスタッフによって創られてゆくものであるから、まずどんなスタッフで構成するかということが懸案事項になってくる。

ダイヤモンドは、どの角度からも見ても輝いているので美しく高価な価格で売買される。それと同じように、一流の製品には深みというものがあって、どんな人が見ても素晴らしいと言えるものほど一流といえるのではないだろうか。

ビジネスには、お客様をイメージし、製品を発想し、実現し、マーケティングし、販売し、アフターフォローするという一連の流れがある。ボトルネックの理論によると、ビジネスの品質は最も品質の悪い部分と一致すると言われる。一気通貫して、すべてのプロセスが"一流"である時にのみ、"一流"といえる製品を世に送り出せるということだ。

今年の春までは営業に難点があった。インターネットを駆使したマーケティングという手法を取り入れることで、販売システムが改良され、会社全体のクオリティが大幅に改善された。

世の中を見ていて、同じような人たちばかりで組織を構成しているが故に、その人たちの得意分野は凄いのだけれども、他の部分が笊のように穴ができてしまって、全体としては残念な組織が多い。

組織構成で心がけていることは多様な人材で組織を構成すること。

実際、コンピューターや情報の専門家もいれば、デザイン、数学、文学、地球物理学、理論物理学、電子工学、経営学、芸術など様々なバックグラウンドを持つ人材が働いている。文化や背景がかなり違う外国からのスタッフもいる。

メダカと人間ほどではないにせよ、人によって見え方がそれぞれ異なっていることを期待している。

  

2004 年 12 月 06 日 : IBMで学んだこと

1987 年から 1993 年までの 6 年間、IBM に所属していた。その時に、経営についてヒントとなる貴重な事柄をいくつか学んだ。

いまでも尊敬すべき企業であることに変わりはない。当時、コンピューターといえば「 IBM 」という程、コンピューター業界の「蒼き巨人( Big Blue )」であった。マイクロソフトオラクルインテルなど世界に名だたる IT 企業も、IBM なくして今日の姿は有り得ないほどの偉大な存在だ。

IBM の経営理念、事業の考え方、進め方などはとても素晴らしい。そういった基盤が磐石であるからこそ、なるべくして IBM という存在が生まれたのだと、今にして思う。

IBM に入社する以前の私は、最先端をいくコンピューターサイエンスの研究というものにしか興味がなく、ある意味では視野の狭いところが多分にあったかと思う。IBM にて、実用的な観点から、高度なコンピューター技術を元にして世界的な超一流のビジネスを創造し、維持し、発展させてゆく方法論というものを実地で学んた。( IBM には感謝している)

IBM で学んだ経営のヒントについてまとめてみる。

1. 経営理念

IBM では経営理念というものが大切にされた。IBM に入社すると、全ての社員は経営理念について 1 ヶ月間にわたって徹底した教育を受けた。

IBM の経営理念は 3 つの概念からなる。

1 番めは"個人の尊重"。社員の個性というものを尊重するということ。経営理念の中でも一番上にランキングされている。IBM では、顧客や株主以上に社員を第一番目に位置付けていた。社員が創造する商品やサービスから全てが始まるということだろう。

2 番めは"顧客への最善のサービス"。顧客が感動し、感激し、感謝するくらいのサービスを目指した。

3 番めは"完全性の追求"。仕事をやる以上、手を抜かず、常にパーフェクトなアウトプットを求めて行動するということ。

以上の 3 つが IBM の基本的な経営理念の考え方である。超一流のビジネスを為すために必要な事柄がシンプルに纏め上げられている。

2. THINK

IBM の礎を創ったのは Thomas J. Watson という人物である。彼は工場の作業員や事務員に至るまで、全ての IBM 社員が自律的に自ら考えて仕事をするスタイルを奨励した。

社員は自分の仕事に対して遣り甲斐や達成感というもの実感することができた。社員の仕事に対する取り組み方は他社と比べて、数倍も、数十倍も、違っていた。自然と、年々業績も伸び続け、遂には IBM はエクセレントカンパニーと称される会社へと成長していった。

IBM 社内では、ボールペン、手帳、時計、演壇など至るところに「THINK」という文字が刻み込まれていた。Thomas J. Watson によれば、本当の「THINK(考える)」という状態に至るまでには、以下の 5 つのステップがあるとしている。

STEP 1. READ (本や雑誌などを読む)

STEP 2. LISTEN (人の話に傾聴する)

STEP 3. DISCUSS (周囲の人たちと議論する)

STEP 4. OBSERVE (物事の推移を観察し洞察する)

STEP 5. THINK (考える)

5 つのステップを経て「THINK(考える)」という段階に辿り着くのだ。日常振り返ってみて、単に「考えている」ということだけをして何のアウトプットも出さずに、時間を無駄を過ごして人は少なくはない。超一流のアウトプットを生み出すために、上記に掲げた「THINK」に辿り着くまでの 5 つのステップはシンプルだが重宝な方法論だ。

追記:ある書籍によると、「THINK」には続きがあって、

STEP 6. CONCEIVE (考え方を打ち出す)

STEP 7. PERFORM (実践する)

STEP 8. LOVE (愛する)

ということに帰着するらしい。

3. ビジネスの真髄

今でこそ、IBM もコンピューターメーカーとして有名な会社であるが、その出発点はミンチなどを作るための「肉切り機」製造メーカーだった。何故、コンピューターメーカーになったのかの経緯は私自身よく覚えていないが、 IBM には「顧客の問題を解決する」ということを第一に考える社風があった。要は、顧客の問題を解決するために必要なものを創るという姿勢だ。顧客のニーズに合うように事業を展開した結果が今日のコンピューターメーカーとしての IBM という訳だ。

IBM 在籍時には、「未来の IBM はコンピューターメーカーでなくなるかもしれない」という話をよく聴いた。

IBM では、仕事をするときは以下のような考え方が徹底されていた。3 つの問いかけの中に、ビジネスを成功に導く重要なエッセンスが隠されている。

Question 1. 顧客は誰なのか?

Question 2. 顧客が抱えている問題は何か?

Question 3. 何故 IBM なのか?

以上の、「経営理念」、「THINK」、「ビジネスの真髄」の 3 つは IBM で学んだ、最も重要な経営の本質であると同時に、私の原点でもある。

◆書籍の紹介:

IBM の経営の基本的な考え方を知るには、下記の書籍が最も参考になる。ビジネスのエッセンスが簡潔にシンプルにまとめられている。

「IBM を世界的企業にしたワトソン Jr. の言葉」
Jr.,トーマス・J. ワトソン (著), Jr.,Thomas J. Watson (原著), 朝尾 直太 (翻訳)
ISBN: 4901234528

  

2004 年 12 月 04 日 : The long and winding road

スタッフが得意なこと、好きなことを仕事とし、いきいきと楽しく過ごすために、経営者が進むべき道や果たすべき役割とは何だろうか?

単純なことだけど、お客様の新しい満足を創造し、それに見合う収益を得ること。スタッフや会社が未来に向かって創造的に成長してゆく、というビジネスのかたち(即ちビジネスモデル)を確立することではないだろうか。得意なこと、好きなことだけしても収入がなければ、人は生きることができない。

それが現実の世界だから。

ビジネスモデルを構築するにあたっては、どんな仕組みでいけば、よりたくさん収益が得られるのかという視点が重要である。ゲーム感覚で、より多くの得点をとるために、どんな作戦でゲームを進めるのがベストだろうかと考えるのと同じ。そういう思考ができれば、ビジネスも楽しみながらやれる。マーケティング・スタッフには「ゲーム感覚で楽しんで!」といつもアドバイスしている。

世の中の役にたち、それだけたくさんの収益がでるビジネスであれば、その収益をスタッフや株主に還元できる。将来のために、更なる新規研究開発事業に投資することもできる。社員を含め、会社全体が大きく発展してゆく可能性が無限に拓ける。

どんなビジネスモデルを創れば、永続的にたくさん儲かるのか?

これこそ経営者が常日頃から真剣に考えるべき最重要課題だ。これによって、お客様を始め、スタッフ、株主、全ての関係者に報いることができるから。

携帯電話に組込まれるソフトウェアを、研究開発しマーケティングする事業を展開している。事業を創めるにあたって、自社のビジネスモデルを創るのに、参考としたのが、世界中に携帯電話機向けに電子部品を製造し販売して儲かっている企業のビジネスモデルである。

実は、ソフィア・クレイドルが位置する、この京都という地には、付加価値の高い携帯電話向けに電子部品を製造して、世界に販売し、しかもシェアがダントツで世界ナンバー 1 の企業が多く存在する。たとえば、京セラ日本電産ロームなどである。これらの企業は、完成品である携帯電話を製造している企業よりもずっと成功している。

こういう会社の事例を深く研究した結果、手っ取り早くアプリケーション開発案件を受託して日銭を稼ぐよりも、世界のあらゆる携帯電話向けアプリに利用できて、他では得がたい高度なソフトウェアテクノロジーを研究開発し、世界に向けてマーケティングすることこそが、選ぶべき選択肢であると確信した。

当時、携帯電話のソフトウェア業界でそのようなビジネスをしている会社は存在しなかった。ビジネスを展開するには、ゴールまでに長い曲がりくねった道のりが待ち構えていた。

ゴールに辿り着くには独創的な発想が要求された。まだ到達したわけでない。最初の着地点を目指して一歩一歩進んでいるところだ。

創業の時に、ビジネスチャンスを見出した米国クアルコム社BREWにはエクステンションというビジネスモデルがあった。そのモデルでは半製品であるソフトウェアモジュール(アプリケーションの部品のようなもの)を、世界の携帯電話通信事業者(キャリア)の無線ネットワーク(専門用語では OTA ともいう。Over-The-Air の略だ。)に乗せて販売することが可能であった。このようなこともあって、私たちは米国クアルコム社の BREW というプラットフォームを迷わず選択した。

まだ BREW のエクステンションの形式になっていない。今月末に完成する。ユーザーインターフェースデータベース通信ネットワークデータ圧縮などのソフトウェアモジュールを、世界の携帯電話に向けて OTA 配信できる日は近い。

早ければ来年から、そのビジネスモデルで事業を展開することになる。先ずは日本からであるが、2006 年以降はこのビジネスを全世界に展開することになるだろう。

世界の携帯電話通信事業者のサーバーに、ソフィア・クレイドルのソフトウェアを登録し、携帯電話の電波に乗せて、世界に何十億台と存在する携帯電話全てに向けてそれを OTA 配信することになるのだ。しかも、美しい素晴らしいソフトウェアを。

成功するための最も重要なキーは品質( Quality )である、と考えている。

世界の人々に、喜んで利用してもらえるためには、400 年余りにわたって世界の人々に親しまれてきたような、モーツアルトの音楽に匹敵するような、何かが求められると思っている。

心地よさや安らぎ、美しさ、ワクワクドキドキ感、調和、カッコ良さ …

突出した Quality に共通する何かが重要である。

  

2004 年 12 月 01 日 : 世界へ、京都の一角から

多くの人が年を重ねると共に、安易な方向へと、ついつい妥協し、自分の夢というものを忘れゆくように思える。

子供のころ、皆さんはどんな夢を持っていただろうか?

世界の頂点を極めたいという願望を、一貫して持ち続けている。それによって失うものも多々あったかもしれない。しかし、生きる中で、最も大切なことは人生における目標、即ち夢の実現ではないだろうか。生活するのは人生の目的ではないだろう。

いま"ソフィア・クレイドル"というチームで同じ夢を共有するスタッフたちと、この上なく楽しく愉快に、刺激的な日々を過ごしている。

世界を変える、革新的なソフトウェアテクノロジーを研究開発して、人びとに提供し期待を遥かに超える満足感や驚きを与える。それがいまの夢だ。

製品を研究開発しているスタッフは、履歴書の趣味とか特技の欄に「コンピューター」あるいは「プログラミング」と記入するような人たちだ。子供のころから、コンピューターやマシンが大好きでプログラミングが楽しみで、今ではそういう仕事をしている。

そんな風に過ごしているので、"プロフェッショナル"という意味では、我々の夢のスタイルは、プロのスポーツ選手やアーティスト、ミュージシャンと同じだと思う。

人々がソフィア・クレイドルのソフトウェアに満足し感動した瞬間、達成感や生きる歓び、自己実現を実感する、ということである。

たくさんの人々から喜ばれるほうが、そんな自己達成感をより多く感じるだろう。だから、最初から、世界に通用する最高傑作といえるソフトウェアを開発したい。世界中の人々に届けたい。

近年、イチロー松井秀喜中田英寿など日本人選手が世界の檜舞台で活躍している。いまや彼らの名前そのものがブランドにまでなっている。

ソフトウェアという分野で、同じように活躍できる可能性はゼロではない。何事も先ずは思いから始まる。思いを潜在意識のレベルにまで昇華させる。だから、取り組む作品にも魂が入り、真の意味で超一流といえるアウトプットが生まれる、と信じている。

周りを見ていてつくづく思う。何ごとにおいても最初から諦めている人が多い。一般的にアタマがいいといわれている人ほどその傾向が強い。ものすごくもったいない。思いは実現する、為せば成るとはよくいうが、これは正しく真理である。

世界に向けて、オリジナルブランドを自らの手で創っていく過程において、苦しい時も確かにある。が、それを埋め合わせて余りある、遣り甲斐とか自己実現というものがあるのも事実だ。

いまは東京から離れた京都という地で仕事をしている。多分、ずっとそうなると思う。

何故、京都なのですか?と時々尋ねられる。一方、京都はブランドでもあるようで、京都という歴史のある地の利を活かして仕事をしていることを、すっと受け止めてもらえることもある。わざわざ、遠方からお越しくださるお客様も多くいらっしゃる。最近では海外からのお客様を迎える日もある。

  

2004 年 11 月 26 日 : Art is long.

傑作と称される「芸術作品」の息は永い。何百年、何千年、何万年と、その生命は永遠といってもよい。

モーツアルトバッハベートーヴェン。これらの巨匠が作曲したクラシック音楽の作品を好んでよく聴く。全ての作品のあらゆる旋律が、全体として完璧なまでに調和がとれ、言葉では表現できないくらい、心地良く美しい。

人びとから愛し続けられる「芸術作品」というものは、フォルムも美しく、眩しいほど輝いている、と感じる。

ソフィア・クレイドルは、スタッフがアーティストとして、製品(社内では「作品」と呼んでいる)をプログラミングし、マーケティングする。あらゆる面において、芸術的な感性を大切する会社である。

「芸術作品」のレベルにまで仕上げることによって、人びとから作品(製品)が永く喜ばれ、愛される。このことがスタッフの励みとなり、相乗効果を増すように、次の創作活動の意欲へと繋がってゆく。

芸術の本質は「その作品が好きかどうか?」というところにある。

自分たちが惚れ込んでしまうほどの作品だけが、人びとからも喜ばれ、愛される資格がある。だから、プログラミングにしても、マーケティングにしても、妥協は許されない。自分たちが惚れ込んでしまうほどの感動的なアウトプットが出せない限り、「芸術作品」と呼べない。

芸術への道程は長い。

心地よいソフトウェアのソースコードには美しいフォルムがある。モーツアルトが記した名曲の楽譜と同じである。作品であるプログラムのソースコードにも外見上の美しさを追求する。

創業当初、ベンチャーの宿命かもしれないが、背に腹をかえることができず、不本意な作品を世に出させてしまうこともあった。(一般的なマーケットの評価から言えば、十分品質的に合格していたのだが)

欠陥があるのではない。製品として充分に役割を果たし、人びとの役に立っていた。寸分の妥協をも許さないプロとしては不本意なレベルだった。

創業して 3 年となり、ラインナップは充実し、実績が生まれ、売上や利益も加速している。作品がよく売れるようになった。

フラグシップともいえる代表作品のリリースアップを全面凍結した。これまでの異常ともいえる研究開発スピードをひとまず緩め、人びとに永く悦んでもらえるような作品とすべく、そのクオリティを高める仕事に没頭するためだ。

3 年間もの長きにわたった、代表作品の研究開発プロジェクトがまもなく一段落する。2005 年春、我々の最高傑作とも言える「アート」を世に送り出せる日が今から待ち遠しい。

願わくば、人びとに末永く喜ばれ、親しんでもらえるような、息の長い「芸術作品」と呼べるものへと育ってほしい。

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