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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : Management

2005 年 01 月 25 日 : 企業理念と経営

先週の土曜日( 1 月 22 日)、企業経営で、創業以来ずっとお世話になっている F 社長に、平成 16 年度京都中小企業技術賞受賞を祝した懇親会を主催していただいた。

曲がりなりにも、歳月を経るに連れ、加速するように会社の経営がぐんぐんと良くなっているのも、一重に F 社長によるご指南のお蔭と大変感謝している。

国内のみならず海外をも含め、手広く事業を展開されておられる方である。過密なスケジュールでご多忙な中、貴重な時間を割いて、京都まで来てくださった。

その意味において、私たちはツイているのかもしれない。謙虚に感謝しなければ…。

ご期待に添えるよう、初心を忘れることなく、より一層励まねばと心を新たにした。

この方から学んだことはシンプルだけれども、ずっしりとした重みがある。では、いま自分が自然な振る舞いとして、それができているかといえば、必ずしもそうでないだろう。しかし、そうありたいという願いだけは強い。思いは実現するという。この志をずっと大切に残したい。

学んだことの本質は、経営の根幹は企業理念にあり、理念は心と人格を高めるという原理原則に基づかなければならないということだ。

創業当時、必死に考えた末、企業理念「夢のある未来の創造」はできあがった。ソフィア・クレイドルの原点ともいえる。多少の表現の修正はあったものの、企業理念そのものにブレはない。一貫してずっと不動の存在である。

難局に差し掛かって迷いや悩みが生じた場合は、いつもこの原点に立ち返って、長期的な展望を持って瞬時に正しく意思決定するように心掛けている。

消えてゆくベンチャーが数多ある中、これこそがソフィア・クレイドルが今日まで生存し、しかもたゆまなく成長している原因であり、真の理由であると思う。

企業理念「夢のある未来の創造」を文章で表現したものを記す。(ソフィア・クレイドルのホームページにある社長挨拶文と同一の文章。)

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■社長挨拶

ソフィア・クレイドルは長期的な展望を持って、様々な視点から世の中のあらゆる事象を洞察する会社です。それにより、シンプルで普遍的な、新しい原理原則を見つけ出し、その息吹を“作品”と呼べるものに凝縮させます。新たな美しく豊かな生活空間をイメージし、その理想を実現させることにより、社会へ貢献できることを願っています。

斬新で、創造的な“作品”を生み出すにあたって大切にしていることは、会社組織に関わるあらゆる方々の立場を尊重する姿勢です。あらゆる個人を尊重し、個々が持つ無限の可能性と多種多様でユニークな才能の間に、相乗効果を発生させることにより、クオリティの高い、世界を変革しうる“作品”が産まれると信じます。

ソフィア・クレイドルは平均年齢 20 代前半という若いスタッフによって構成されている組織でもあります。既成概念にとらわれない若者たちが、のびのびと楽しく自由に発想し、行動することによって、光り輝く、希望と夢に満ちた“新しい時代”を切り開いていく場であるように目指します。

株式会社ソフィア・クレイドル
代表取締役
杉山和徳

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2005 年 01 月 23 日 : 最速のスピードで

京都競馬場へ足を運ばなくなって久しい。ご存知ない方もおられるかと思うが、そう、京都には競馬場もある。以前は競馬場にて、競走馬たちが主役であるレースの風景をよく眺めていた。

競走馬は、レース上の展開における馬群での位置取りの順序によって、逃げ馬、先行馬、差し馬、追い込み馬というような 4 つくらいのタイプに分類される。

2000 メートルのレースであれば、僅か 2 分くらいで終わってしまうほどあっけないものであるが、その中でいろんなことを考えさせられたりすることもある。

初めて競馬のレースを見たときは、何が起こっているのか全く分からなかったが面白かった。それで何回も何回も、飽きもせず繰り返し見ているうちに、いろんなタイプの競走馬がいたり、馬の体調や競馬場のコンディションによって、レースの結果が違ってくることが、次第に理解できるようになった。

面白いなと思ったひとつは、レースで上位に入線する馬、いつも惨敗している馬というのが、大体決まっていることだった。その馬の体つきを見る限り、そんなに大差は見受けられないのだが、それが騎手の腕なのか、調教と呼ばれる訓練が素晴らしいのか、或いはその馬自身の能力なのか、レースが始まる前から結果が概ね予想できてしまうこともある。

そのため、JRA(日本中央競馬会) では馬のレベルに合わせて、レース番組を G1、G2、G3…と細かく分類している。G1というのが最高峰のレース。日本ダービー(東京優駿)とか天皇賞有馬記念という名のレースは G1 という格付けになっている。

僅か 2 分程度の短いレースなのだが、最初からずっと先頭を走ってそのままゴールまで辿り付ける馬もいれば、最後の第 4 コーナーまでは最後方の位置取りだったのにも関わらず、ゴール板を通過した時点では先頭を切っている馬もいる。ずっと先頭のままゴールインする方が稀なケースといってもよい。

競馬のレースというものは、第 3 コーナーから第 4 コーナー、そしてゴールへの道のりのなかで、馬群の大勢が揺らぎ、大きく変化する。最終的に、ゴールをその競走馬の中でも、トップスピードを刻んだ馬が優勝するということになる。

途中までずっと最後方に控えていたとしても、最後の決勝線でトップでそこを駈ければそれでいい。競馬関係者の談話を聞いていると、常勝する競争馬は、馬自身が、どこがゴールかを見極めているかのようなペース配分で走る、という。それは勿論、騎手による配分もあろう。私はその話にとても関心を惹かれた。

人生における、競馬のレースでいうところのゴールはどこなのだろうか?できれば、私は、ゴール板を過ぎる時は、たとえ一瞬であっても、人生における最速のスピードで駈け抜けたいと願っている。

人生は短くもあり長くもある。ソフィア・クレイドルの創業スタッフたちの平均年齢は 23 歳に過ぎない。彼らのゴールもまだであるし会社もそうだ。高齢化社会が進む現代であれば、そのゴールは 50 年後のことなのかもしれない。(会社のゴールそのものは果てしなく遥か永遠の彼方にあると願いたい。)

そのときに、トップでゴールを疾走できるように、長期的な展望や視野を持っていることが何よりも肝心なことではないか、と久しぶりに競馬を見て感じた。

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2004 年 12 月 26 日 : Phase transition

中学生の時に理科で習った「物質の 3 態」の話はいまでも興味深い。固体、液体、気体という状態のことを「相」といい、微妙な温度と圧力の組み合わせで、物質が瞬間的に「相」を移り変わることを「相転移(Phase transition)」と呼んでいたことを思い出す。

経営というのは絵を描いたり、作詞、作曲したりとアートに似たところが多い。マニュアル通りにはいかないことが多く、相転移にも似たような微妙な違いで相が大きく転移してしまう。だから、繊細な経営センスというものをどうやって培い、あるいは磨いていくかによって、その企業の未来が決まるように感じる。

相転移の実験のように、ちょっとした意思決定のタイミングやバランスといったものが、分岐点になってしまう。また、そういったことを意識するのとしないのとでは大きな違いがある。

スピードだけを重視し、熟考せずに意思決定し、たまたま大当たりして、波に乗れることもある。

転落というものは一瞬のうちに訪れる。あれだけ脚光を浴びていたのに、人々の記憶の中から消え去っていったベンチャーは星の数ほどある。

ベンチャー起業は多大な犠牲を伴うものだ。だから、その犠牲に補って余りあるほどの宝物、煌く宝石の結晶を、一緒に創業したスタッフと共有したい。

勿論、失敗もあるだろう。

失敗や痛みの中から、未来の発展に向けての新しい芽を見出すことが出来るならば、それは失敗ではない。

成功にできるか失敗になってしまうか、境界線は、極めて微妙なものではないだろうか。これが、沸点で水が液体から気体に相転移する時のような感じで、ほんの微妙な差で、固体であったり、液体であったり、気体であったりする。絵画でも、細部にこだわる時と全体のバランスでこだわらない時とがある。

ベンチャー経営というものは、相転移の境界線上を、如何にしてうまくコントロールしながら、アーティステックに自ら成長してゆく道のりではないだろうか。

  

2004 年 12 月 24 日 : Communication −考察−

いまから6 〜 7 年前、総勢 170 名に達するくらいのプロジェクトを指揮するリーダーをしていた。現在より量的にスケールの大きな組織だった。

当時、いろいろと苦い経験を味わった。さまざまな貴重な教訓も学んだ。なかでも、組織が急拡大するにつれて、コミュニケーションをどうやって効率化するかについて考えさせられることが多かった。

海外展開を視野に入れてソフィア・クレイドルというベンチャーを経営している。現在は十数名の小規模な組織だが、もっと大きな組織になっても通用するようなコミュニケーションのインフラを整備しておきたい。

備えあれば憂いなし。

いまの段階から将来に向けて磐石なものを構想しておきたい。

スケールの大きな仕事をしようとすれば、多様な才能を持つ、多くの人たちとのコラボレーションが必要となる。有能な人材をたくさん集めることができれば、それだけ大きな仕事がこなせる。

プロジェクトに関わる人が増えてくると、同時に、コミュニケーションのボトルネックというものが生じてくる。これは成長する組織が避けて通ることのできない道でもある。

大規模な組織では、人と人とのコミュニケーションをどうやって最適化するかということが厄介な課題となる。ごく普通の当たり前の話かもしれない。でも、これを本質的な問題として受け止めて、その対策のために、具体的な行動へと繋げている経営者は意外に少ない。

大規模な組織になった時、その運営の効率を最適にする術とは――「いかにして無意味なコミュニケーションのための時間や手間を減らすか」なのである。

実際に作業をする時間よりも会議の方が長いというのも、あちこちのプロジェクトで日常茶飯事のことのようだ。言うは易しであるが、解決するためにはどうしたらいいのだろうか。これは次のような簡単なたとえ話から、示唆を得ることができると思う。

日本人とロシア人がいてコミュニケーションをとろうとしたとする。でもお互いに相手の母国語を知らなければ、先に言語を学ばなければならないということになる。そのため肝心のコミュニケーションに辿り着くまでに、相当の時間がかかってしまう。

お互いに共通の言葉として英語が分かるのならば、直ぐに本論に入ることができる。つまり、両者が、コミュニケーションに必要なバックグラウンドを共有していればいるほど、そのコミュニケーションは短時間でありながら最高の結果に近づいてゆくことになる。

仕事の場合も、スタッフ同士が、必要な知識や智慧、ノウハウなどについて、多く深く、知っていればいるほど、無意味なコミュニケーションの量が減り、仕事はそれだけ上質なものとなる。阿吽の呼吸という表現でよくいわれる。

ベンチャー企業であれば、日々の業務に追われてしまって、物事や相手のことを知る機会や時間が減りがちである。それに注意しなければならない。具体的な仕事よりも勉強や研究や懇親のため、最初は仕事のペースが落ちてしまう。

だが、急がば回れということで、まずは仕事の基盤となるものを学ぶことを第一にしたほうがよい。指数関数曲線を描いて成長するための重要なヒントである。

そのために、企業理念、ビジョン、そして行動指針がある。

  

2004 年 12 月 10 日 : Professionality and Cradle

真にプロフェッショナルといえるような感動を創造する仕事をしたい、というのが願いであり目標である。

プロという名の付く世界では、常識といえよう。でも、ビジネスの社会ではアマチュアレベルの人が、何と多いことだろうか!

超一流といわれる大企業とて例外ではない。

サッカーにしてもラグビーにしても或いは甲子園にしても、アマチュアはプロには全く歯が立たないのが現実。アマチュアが大半を占めるのがビジネスの世界では、ベンチャーが大企業を凌駕するのは簡単である。

会社のメカニズムをプロフェッショナルにすればよいのである。プロはアマチュアに負けないから。

プロの世界では、最初から自然淘汰、適者生存の仕組みが備わっている。つまり一流でないと生き残れないという厳しい世界である。イチローのように、自分の才能や素質を活かして、たゆまぬ努力を継続することで、世界に感動の渦を巻き起こすことも可能である。得られる楽しさや達成感はきっと他に代えがたいものだろう。

スタッフのプロフェッショナリティの萌芽を育てつつ、そんな感動を体験して、いつもワクワク&ドキドキしていたい。

プロの世界では、どのように自然淘汰、適者生存の仕組みが導入されているのだろうか?

シンプルなルールがそこに在る。

サッカーの場合、レギュラーの選手は 1 チーム 11 名だ。そもそも 12 名以上選手が試合に同時に出場して戦うことは有り得ない。ということは、レギュラーポジションを巡って熾烈な切磋琢磨な競争が繰り広げられる、ということになる。

グループにしても、J リーグでは J1、J2、J3というようなグループに分けられ、成績次第で上位グループや下位グループに所属することになる。ステイタスや収入面でもその差は天国と地獄らしい。だから、選手たちは自然と努力することになる。(J3 はこれからの構想らしい。)

最近、イタリアのセリエ A などヨーロッパサッカーの舞台で世界的に活躍する日本人選手も出てきている。

会社に置き換えてみたらどうだろう。会社の場合でも、J1、J2、J3 のようなグループを編成する。プロのサッカー選手と同じように決まった定員しか、プロジェクトには関わることができないようにする。プロジェクトが、人生を賭けるほど価値のある素晴らしい体験であれば、ビジネスの世界でも、J リーグの感動を呼ぶプレーのようなアウトプットも生まれるに違いない。

そう、ビジネスだって、プロジェクトチームのメンバーで感動プレーを創ることができる。

  

2004 年 12 月 06 日 : IBMで学んだこと

1987 年から 1993 年までの 6 年間、IBM に所属していた。その時に、経営についてヒントとなる貴重な事柄をいくつか学んだ。

いまでも尊敬すべき企業であることに変わりはない。当時、コンピューターといえば「 IBM 」という程、コンピューター業界の「蒼き巨人( Big Blue )」であった。マイクロソフトオラクルインテルなど世界に名だたる IT 企業も、IBM なくして今日の姿は有り得ないほどの偉大な存在だ。

IBM の経営理念、事業の考え方、進め方などはとても素晴らしい。そういった基盤が磐石であるからこそ、なるべくして IBM という存在が生まれたのだと、今にして思う。

IBM に入社する以前の私は、最先端をいくコンピューターサイエンスの研究というものにしか興味がなく、ある意味では視野の狭いところが多分にあったかと思う。IBM にて、実用的な観点から、高度なコンピューター技術を元にして世界的な超一流のビジネスを創造し、維持し、発展させてゆく方法論というものを実地で学んた。( IBM には感謝している)

IBM で学んだ経営のヒントについてまとめてみる。

1. 経営理念

IBM では経営理念というものが大切にされた。IBM に入社すると、全ての社員は経営理念について 1 ヶ月間にわたって徹底した教育を受けた。

IBM の経営理念は 3 つの概念からなる。

1 番めは"個人の尊重"。社員の個性というものを尊重するということ。経営理念の中でも一番上にランキングされている。IBM では、顧客や株主以上に社員を第一番目に位置付けていた。社員が創造する商品やサービスから全てが始まるということだろう。

2 番めは"顧客への最善のサービス"。顧客が感動し、感激し、感謝するくらいのサービスを目指した。

3 番めは"完全性の追求"。仕事をやる以上、手を抜かず、常にパーフェクトなアウトプットを求めて行動するということ。

以上の 3 つが IBM の基本的な経営理念の考え方である。超一流のビジネスを為すために必要な事柄がシンプルに纏め上げられている。

2. THINK

IBM の礎を創ったのは Thomas J. Watson という人物である。彼は工場の作業員や事務員に至るまで、全ての IBM 社員が自律的に自ら考えて仕事をするスタイルを奨励した。

社員は自分の仕事に対して遣り甲斐や達成感というもの実感することができた。社員の仕事に対する取り組み方は他社と比べて、数倍も、数十倍も、違っていた。自然と、年々業績も伸び続け、遂には IBM はエクセレントカンパニーと称される会社へと成長していった。

IBM 社内では、ボールペン、手帳、時計、演壇など至るところに「THINK」という文字が刻み込まれていた。Thomas J. Watson によれば、本当の「THINK(考える)」という状態に至るまでには、以下の 5 つのステップがあるとしている。

STEP 1. READ (本や雑誌などを読む)

STEP 2. LISTEN (人の話に傾聴する)

STEP 3. DISCUSS (周囲の人たちと議論する)

STEP 4. OBSERVE (物事の推移を観察し洞察する)

STEP 5. THINK (考える)

5 つのステップを経て「THINK(考える)」という段階に辿り着くのだ。日常振り返ってみて、単に「考えている」ということだけをして何のアウトプットも出さずに、時間を無駄を過ごして人は少なくはない。超一流のアウトプットを生み出すために、上記に掲げた「THINK」に辿り着くまでの 5 つのステップはシンプルだが重宝な方法論だ。

追記:ある書籍によると、「THINK」には続きがあって、

STEP 6. CONCEIVE (考え方を打ち出す)

STEP 7. PERFORM (実践する)

STEP 8. LOVE (愛する)

ということに帰着するらしい。

3. ビジネスの真髄

今でこそ、IBM もコンピューターメーカーとして有名な会社であるが、その出発点はミンチなどを作るための「肉切り機」製造メーカーだった。何故、コンピューターメーカーになったのかの経緯は私自身よく覚えていないが、 IBM には「顧客の問題を解決する」ということを第一に考える社風があった。要は、顧客の問題を解決するために必要なものを創るという姿勢だ。顧客のニーズに合うように事業を展開した結果が今日のコンピューターメーカーとしての IBM という訳だ。

IBM 在籍時には、「未来の IBM はコンピューターメーカーでなくなるかもしれない」という話をよく聴いた。

IBM では、仕事をするときは以下のような考え方が徹底されていた。3 つの問いかけの中に、ビジネスを成功に導く重要なエッセンスが隠されている。

Question 1. 顧客は誰なのか?

Question 2. 顧客が抱えている問題は何か?

Question 3. 何故 IBM なのか?

以上の、「経営理念」、「THINK」、「ビジネスの真髄」の 3 つは IBM で学んだ、最も重要な経営の本質であると同時に、私の原点でもある。

◆書籍の紹介:

IBM の経営の基本的な考え方を知るには、下記の書籍が最も参考になる。ビジネスのエッセンスが簡潔にシンプルにまとめられている。

「IBM を世界的企業にしたワトソン Jr. の言葉」
Jr.,トーマス・J. ワトソン (著), Jr.,Thomas J. Watson (原著), 朝尾 直太 (翻訳)
ISBN: 4901234528

  

2004 年 12 月 04 日 : The long and winding road

スタッフが得意なこと、好きなことを仕事とし、いきいきと楽しく過ごすために、経営者が進むべき道や果たすべき役割とは何だろうか?

単純なことだけど、お客様の新しい満足を創造し、それに見合う収益を得ること。スタッフや会社が未来に向かって創造的に成長してゆく、というビジネスのかたち(即ちビジネスモデル)を確立することではないだろうか。得意なこと、好きなことだけしても収入がなければ、人は生きることができない。

それが現実の世界だから。

ビジネスモデルを構築するにあたっては、どんな仕組みでいけば、よりたくさん収益が得られるのかという視点が重要である。ゲーム感覚で、より多くの得点をとるために、どんな作戦でゲームを進めるのがベストだろうかと考えるのと同じ。そういう思考ができれば、ビジネスも楽しみながらやれる。マーケティング・スタッフには「ゲーム感覚で楽しんで!」といつもアドバイスしている。

世の中の役にたち、それだけたくさんの収益がでるビジネスであれば、その収益をスタッフや株主に還元できる。将来のために、更なる新規研究開発事業に投資することもできる。社員を含め、会社全体が大きく発展してゆく可能性が無限に拓ける。

どんなビジネスモデルを創れば、永続的にたくさん儲かるのか?

これこそ経営者が常日頃から真剣に考えるべき最重要課題だ。これによって、お客様を始め、スタッフ、株主、全ての関係者に報いることができるから。

携帯電話に組込まれるソフトウェアを、研究開発しマーケティングする事業を展開している。事業を創めるにあたって、自社のビジネスモデルを創るのに、参考としたのが、世界中に携帯電話機向けに電子部品を製造し販売して儲かっている企業のビジネスモデルである。

実は、ソフィア・クレイドルが位置する、この京都という地には、付加価値の高い携帯電話向けに電子部品を製造して、世界に販売し、しかもシェアがダントツで世界ナンバー 1 の企業が多く存在する。たとえば、京セラ日本電産ロームなどである。これらの企業は、完成品である携帯電話を製造している企業よりもずっと成功している。

こういう会社の事例を深く研究した結果、手っ取り早くアプリケーション開発案件を受託して日銭を稼ぐよりも、世界のあらゆる携帯電話向けアプリに利用できて、他では得がたい高度なソフトウェアテクノロジーを研究開発し、世界に向けてマーケティングすることこそが、選ぶべき選択肢であると確信した。

当時、携帯電話のソフトウェア業界でそのようなビジネスをしている会社は存在しなかった。ビジネスを展開するには、ゴールまでに長い曲がりくねった道のりが待ち構えていた。

ゴールに辿り着くには独創的な発想が要求された。まだ到達したわけでない。最初の着地点を目指して一歩一歩進んでいるところだ。

創業の時に、ビジネスチャンスを見出した米国クアルコム社BREWにはエクステンションというビジネスモデルがあった。そのモデルでは半製品であるソフトウェアモジュール(アプリケーションの部品のようなもの)を、世界の携帯電話通信事業者(キャリア)の無線ネットワーク(専門用語では OTA ともいう。Over-The-Air の略だ。)に乗せて販売することが可能であった。このようなこともあって、私たちは米国クアルコム社の BREW というプラットフォームを迷わず選択した。

まだ BREW のエクステンションの形式になっていない。今月末に完成する。ユーザーインターフェースデータベース通信ネットワークデータ圧縮などのソフトウェアモジュールを、世界の携帯電話に向けて OTA 配信できる日は近い。

早ければ来年から、そのビジネスモデルで事業を展開することになる。先ずは日本からであるが、2006 年以降はこのビジネスを全世界に展開することになるだろう。

世界の携帯電話通信事業者のサーバーに、ソフィア・クレイドルのソフトウェアを登録し、携帯電話の電波に乗せて、世界に何十億台と存在する携帯電話全てに向けてそれを OTA 配信することになるのだ。しかも、美しい素晴らしいソフトウェアを。

成功するための最も重要なキーは品質( Quality )である、と考えている。

世界の人々に、喜んで利用してもらえるためには、400 年余りにわたって世界の人々に親しまれてきたような、モーツアルトの音楽に匹敵するような、何かが求められると思っている。

心地よさや安らぎ、美しさ、ワクワクドキドキ感、調和、カッコ良さ …

突出した Quality に共通する何かが重要である。

  
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