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2005 年 11 月 04 日 : ポータビリティ

svHacker と SophiaFramework は、携帯ゲーム機や PDA など、世界のいろんな携帯端末向けソフトを携帯電話で使えるようにするソフト技術。これついて、発想の原点をまとめてみる。

私たちの身の回りには、NTTDoCoMoauvodafone などの携帯電話、iPod のような携帯デジタルオーディオプレイヤー、PSPNintendo DSGAME BOY などの携帯ゲーム機、それから PalmPocket PC などの PDA など、携帯端末が数え切れないほどたくさん存在する。

そんな多種多様な携帯端末向けに、ゲーム、ビジネス、教育など無数のソフトがこれまでに開発されてきた。姿形こそ違えども、これらの各種携帯端末には 1 点だけ共通するものがあった。それは端末全体をコントロールする心臓部に相当するマイクロプロセッサが英国の ARM 社製で全く同じだという点。

現代の進化したソフトテクノロジーでもってしても、機械がソフトを自動的に製造するという夢は叶わない。魅力的なソフトほど人の手に頼らざるを得ないのが現実だ。ひとつのソフトを開発するのに何ヶ月も何年もの開発工数が費やされている。

IBM も、ORACLE も、そして Microsoft にしても、飛躍的な発展の礎になった、テクニカルな理由は他よりも抜群に秀でたソフトのポータビリティだった。膨大な費用をかけて開発したソフトを他のプラットフォームでも自動的に動作する仕組みが必ずと言っていいほど搭載されていた。

今回発表した svHacker と SophiaFramework は様々な種類の携帯端末向けソフトを携帯電話向けに自動変換する技術である。過去、偉大なコンピューター企業が採ったアプローチを単に踏襲したに過ぎない。けれども広く世界全体を見渡しても、他でこれをやっている企業は皆無だった。

ビジネスチャンスとは、大抵の場合、皆から忘れ去られた基本的な原理原則の中から見出せるものなのだ。

  

2005 年 11 月 03 日 : アンチテーゼ

大企業に勤務していた頃の素朴な疑問が今のベンチャービジネスに繋がっている。

何万人もの社員がいる大企業には、標準の 10 倍以上の成果をあげる有能な社員がいる。大企業で勤務した経験があるのなら、その事実に異論を唱える者はいないだろう。

それではそんなにも有能な社員は標準の 10 倍以上の年収を得ているだろうか。状況は変化しつつあるけれども、大企業ほどそんな会社は噂にすら聞かない。

同様に急成長しているベンチャーが 1 年間で社員数が 3 倍に伸びたという話はよく聞く。しかし 幹部の間ではあり得るけれど 1 年間で社員の平均年収が 3 倍になったという話はあまり聞かない。

多くの人が何となくおかしいと思いながらも、実際には行動しない。そんなニッチにベンチャーのビジネスチャンスは隠されている。大切な経営に関する指標は社員 1 人当たりに換算したものではないだろうか。

人材は世界中から募るが、滅多に募集しない。何故なら 1 人で通常の 3 倍の仕事をするのならば 3 倍の年収が得られるような会社にしたいから。注文が 3 倍になっても仕事をする人数が以前と同じなら簡単な算数ですぐに計算できる。そんな会社が理想。

好きな仕事ができて、成果に見合う収入が得られるようにしたい。そうであれば、数は少なくともその分だけ気心の知れた素晴らしい逸材はきっと集まるだろう。

普通よりも 10 倍仕事ができる人が 10 人集まるというのは何を意味するのか?

それは 10 人 × 10 倍 = 100 人分の仕事が 10 人でなされるのではない。その 100 の 2 乗である 1 万人分の仕事が 10 人でなされる感じだと思う。

  

2005 年 11 月 03 日 : 売上とか利益とか

ひたすらお金を追い求めて慌しく人生を過ごすのはよくあるケース。売上とか利益とか、ソフィア・クレイドルにはお金に関する目標やノルマは一切存在しない。

大きな数字になるに越したことはない。確かに言えるのは、去年より今年、今年よりも来年という風に、きっと数字は加速して美しくのびるだろうこと。極めて楽観的なのだ。

サラリーマンの頃、お金に困っていた訳じゃなかった。他人の思惑に左右されるよりも人生を自ら切り拓ける道を求めて起業した。初心は大切にすべきもの。

自らの意志で自らの思いのままに生きる姿こそ自分の理想であり、会社のポリシーでもある。

しあわせな乳牛からは美味しいミルクが生まれるという。同様にスタッフが幸せなら、創造されるものはこよなく素敵で魅力的なものになるだろう、という仮説を持っている。

安心して経営に臨める理由はそんなところにある。

  

2005 年 10 月 31 日 : 曲線の形状

ベンチャービジネスで自分の思いを実現するには、理想型のS字カーブをイメージして自ずとそうなるように経営する習慣がキーになるだろう。スポーツの世界であれば、それはイメージトレーニングに相当するのかもしれない。

どうすればS字カーブの最初の曲線が上向くスピードが速くなるのか?

どうすればS字カーブの山が大きくなるか?

どうすれば理想的なS字カーブの曲線を繰り返し描けるのか?

千円札を 1 万円札に交換してくれる店があれば、間違いなくその店には長蛇の行列ができる。しかし原価千円の商品を価格 1 万円で販売していても、長蛇の行列ができる店は極めて少ない。その商品に潜在的に 1 万円以上の価値があっても、である。

では、それは何故か?

と考えてみるところから出発すれば思わぬヒントが得られるかもしれない。

商売の基本は、お客様に、千円の商品に 1 万円の価値をリアルにイメージさせることではないだろうか。千円札を 1 万円札に交換してくれるところがあれば人は殺到するから、そんな商売であれば間違いなく繁盛するだろう。

そして、お客様が実際にその商品を手にして本当に 1 万円の価値を得たと実感すれば、そうある限りその商売はきっと永続することだろう。

では何故そのような商売は現実にはあまり存在しないのだろうか?

ひとつには錬金術のごとく、それだけの価値を有する商品を創造するのが困難だからである。そんな商品は究極のある一線を超えない限り生み出し得ないものである。高いハードルに敢えて挑戦する人も少なければ、その一歩手前で諦めてしまう人がほとんどだからだろう。

逆に言えば、挑戦し諦めなければ、競争は限りなくゼロに等しく勝ち残れる確率は時間の経過と共に急上昇するものである。だから成功するまで諦めないというのが成功法則としてよく言われるのかもしれない。

もうひとつ言えることがある。それはどんなに価値あるものを創造したとしても、お客様の心に伝わるメッセージでその商品を表現しなければ意味がないということだ。

光のスピードは余りにも早く人の能力では察知できない。同じように偉大なものほど誰にでも分かるようにそれをメッセージとして表現するのが難しいというパラドックスが成立している。

このパラドックスをどうやって解くかが、偉大なベンチャーへと繋がる最大の関門に至る道程に思う。

  

2005 年 10 月 30 日 : S字カーブ

モバイルインターネットの基本ソフトウェア技術を手がける、ソフィア・クレイドルはハイテクベンチャーというカテゴリーに分類される。

ソフトウェアという分野のハイテクベンチャーを起業する際、押さえておくべきポイントは何か。起業を確実に成功させるため、これは大切な問題意識である。

一般に、製品やサービスは横軸を経過時間、縦軸を販売数量とした時、正規分布の曲線を描く。時間軸で積分した累積の販売数量の曲線がよく言われるS字カーブである。

ハイテクベンチャーでしばしばあるのは、S字カーブの最初の直線が全然浮上せずそのまま終ってしまうケース。もう少しでS字のカーブがプラス方向に浮上し、全く逆のシナリオになったであろうケースも数え切れぬほどあるだろう。

対象とする要素技術が真に人びとから望まれるものであるならば、時間の問題で、そのビジネスは間違いなくS字曲線を描いて発展し繁栄を築く。けれども有望なハイテクベンチャーでもその大半は失敗に終る。

破綻の原因は、会社のキャッシュが無くなった、という単純な事実に過ぎない。だから破綻しないためには、会社からキャッシュが減らないような努力をすれば良いだけなのだが、この経営センスが難しく思われる。

というのは、世の中、業界、会社で起こる現象や出来事の、微妙なニュアンスの意味を適切に解釈して意思決定し行動する必要があるからだ。

大切なのは、何処が分岐点になるかの見極めだろう。ハイテクベンチャーの場合は、最初にS字カーブが浮上し損益分岐点を越えるポイントである。そのポイントまで、キャッシュがかなり余裕をもって存在するように経営すれば破綻する確率は大幅に低減される。

未来予測は、さまざまな情報をインプットし論理展開する必要がある。いくら時間があっても足らない。正確に予測しようと思えば思うほど、そのために多大な情報と労力が要求されるものである。

経営者にとっては、時間こそが最も貴重な経営資源である。だからその時間をどれくらい大切にしてその未来予測に投入しているか。そういった行動がそのベンチャーの未来を決定づける。

  

2005 年 10 月 29 日 : Tapestry

テレビにしてもパソコンにしても、それらに映し出される映像や画像は、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)という基本的な 3 色の組み合わせたものに過ぎない。そのシンプルさがなんとなく不思議に感じもする。

実は世の中の複雑そうに見える出来事も、紐解けば基本的な要素が織り成すタペストリーなのではないだろうか?複雑そうに見えるものを不自然に考え込んだりして事態が悪化の一途を辿るケースもよくある話。

シンプルイズベスト。

しばしば言われる言葉ではある。でも実践するのは難しい習慣である。元来、世界全体がシンプルな構造で出来ているのだから簡単なはずなのだけれども。

それは、地球上の生命の中でも人間だけにある、顕著な特徴とも言える感情が却って災いしているのではないだろうか。誰もが個人的な感情を抱えて生きていると思う。そういった感情は世界を客観的に捉えるにあたって障害になりやすいのかもしれない。

ベンチャーの場合、経営資源が極端に限られるのは確固たる事実である。でも何千万色にもおよぶ様々な色も基本はたった 3 色なのだ。その限られた少数の経営資源でも組み合わせは無限にある。そんな無限の組み合わせの中から、ダイヤモンドのごとく光り輝くものを見出してプロデュースする仕事は、ベンチャー起業家の重要な役割のひとつ。

では、その才能を磨くためにはどうすれば良いか?

それは、音楽でも絵画でも文学でも何でもいい。素晴らしいものを何度も何度も繰り返し感じとること。感覚と感性を育んでゆく訓練が欠かせないだろう。

  

2005 年 10 月 29 日 : 世界への橋頭堡

お客様の大半は東京の会社である。しかしながら、過去 1 年間、 1 度も東京へ出張していない。(そもそも京都を離れたのはささやかな用事で大阪へ 2 度あるくらい。限りある時間をこの上なく大切にしているので社外の人とも滅多に会わない。)ビジネスの大半は東京を中心とする首都圏でなされている。だから手っ取り早くビジネスを立ち上げたければ東京へ行くのがベストなのは確か。

でも敢えてその道は選ばなかった。人と違う行動を採ることはベンチャーらしく思えた。誰もが発見できない新しいビジネスチャンスはそんな行動の中から生まれるものでは?

皆が東京へ出稼ぎに行くからそれに習えば儲かるというのは面白くない。東京へ行くこと自体に何も問題はない。昔むかし、京都が首都だったはずで、時代の流れに翻弄されたくもない。

創業以来、外出を避けていたのには理由がある。そういった状況に自らを追い込めば、京都からでも日本全国に商品が売れるための仕組みが必然的に創造される。

マーケットが東京だけならば東京に出張しても、支店を開設しても全然問題ない。ビジネス的にそうすべきだろう。しかしソフィア・クレイドルのマーケットエリアは全世界なわけ。たまにローマやパリ、ロンドンへ出張するのならば、それも良い。けれども何か案件が発生するたびに海外出張しているとすれば、人がいくらいてもたらないビジネスモデルが出来上がってしまう。

それを避けるために、最初からハードルを高くして、営業はインターネット 1 本で、商品の出荷は宅配便、サポートはメールという手段ですむビジネスモデルを構築していった。

インターネットだけで商品を売る難しさは身に染みるほど味わった。でもそれを一種のパズルのようなゲームに置き換えてみることでいろんな発想が思い浮かんだ。様々なアプローチを実践し、取捨選択しながらここまで来たのだけど、幸い何とかここまでやってこれている。

ネットから注文が入れば、宅配便の会社にダイヤルするだけで荷物が配送されるように業務がスムーズに流れている。発注元が国内であろうと海外であろうと、日本語と英語の違いを除けば、受注・出荷処理の中身は全く同じ。京都に本社があるだけで世界マーケットを対象にしたビジネスができる。それはインターネットの偉大さを実感する瞬間でもある。

  
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